青森自転車見聞録

2003年の9月の22日から 8日間かけて青森を自転車にて見聞して参りました。
自転車で旅、と人にいうととんでもない体力ですね、と人に感心される事がよくあります。
そんなことはないのです。僕なんて体力は人並みです。

何でチャリ旅をするの?ともよく人に聞かれます。
僕は大阪にいる時はずーっと車移動の人間でした。
しかしある時、 歩く事によって見なれていたはずの街の見え方がちがう事に気付いた事からはじまったのです。
皆さんにも経験ありませんか??
たとえ都心であっても、ふだん車で移動している所をたまたま歩いてみたら、思わぬお店を発見出来たりとか、それまで気付かなかったちょっといい公園があったリとか。
そういった事の延長線上に僕のチャリ旅はあるのです。

しかし、旅が新しい何かの発見というものであるなら、別に車でも旅は出来ると思います。
でも絶対に自転車でしか味わえないものがあります。
それは、その土地が持つ、その時期にしかない、空気感といったものです。
その土地を感じるのは、目だけではないと思います。
僕は5感のすべてを総動員して感じたい。
だから僕の旅の手段は自転車なのです。

今回の旅は、行帰りともに新幹線による輪行を伴う計画を立てました。
さすがに青森まで自走するとなると片道5日はかかるでしょう。
故に往路復路ともの輪行になったのですが、出来る事なら輪行は復路片道にする方がいいように思いました。
特に大間崎(本州最北端の岬)に行った時にそれを感じました。
大間には、「辿り着」かなくては意味がないように思いました。
自宅から自走してようやく辿り着いた本州最果ての地、という感動は、輪行をしてしまうと半分になってしまいます。
又、新幹線というのは速度が速すぎて距離のリアリティーを感じる事が出来ません。
東京に出てくる時に企画した大阪〜東京の旅の目的は、その距離のリアリティーを感じる事、でした。
今まで僕が暮らしていた大阪、とこれから暮らす東京(当時は本当に東京都在住でした・・・)との距離を、体を持って認識する事が、まあ僕なりの一つの儀式でした。

ともかく、青森は素晴らしかった。
仮に輪行したことにより、極端な話今回の旅が観光、になってしまっていたとしても、その観光としてのレベルは超Aクラスの素晴らしい観光でした。
今回の旅は十和田湖、奥入瀬渓流がメインイベントであったのですが、それより前に回った下北半島も本当に素晴らしかったです。
考えてみたら生まれてこの方、ここまで長い期間緑に囲まれて過ごした事はいちどもないのではないか、と思いました。
2、3日緑に囲まれて過ごす事はあっても、8日間ず〜〜〜〜〜〜っとというのは、わが人生初の経験でした。


旅の初日、八戸から北へ漕ぎ出してすぐ本当に自然に囲まれた所を走る事が出来ました。
普通は漕ぎ出して何日かしてからようやく美しい所を走る事ができるものなのですが。

青森を旅しはじめた最初の感想は、まるで日本ではないようだ、というものでした。
というよりも、僕の知っている日本の風景とは何かが違いました。
僕のなれ親しんだ関西にも自然の風景はたくさんありますが、それとは何かが異なります。
考えてみれば、日本は縦に長いので、大阪から青森といっても1000km以上も離れています。
関東とでも6、700kmは距離があります。
又、緯度もかなりの差があるでしょう。
それが故におそらくは植物の生態系等等が異なるのでしょう。それが風景に異なる何かをもたらしているように感じました。
また、厳しい冬の気候等も何か関係があるのでしょう。
余談ですが、関西と関東とでは、夏のサウンドが違うのです。
というのは、関西に多く生息する蝉は「あぶらぜみ」で、関東の「みんみんぜみ」とは違うのです。
あぶらぜみの鳴く夏は暑いですよ・・・。
関東と関西でもそれだけの違いがあるのですから、青森は違って当然ですよね。
また、奥入瀬は、その特殊な自然環境から(太陽が余り入らない)コケシダ植物の宝庫で、その光景はまるで原始時代さながらでした。

(初日にキャンプした六ヶ所村の海岸。朝日が昇る所です)

まず尻屋崎という岬を訪れました。
この岬は、本州最北端の大間崎と並んで、寒立馬(かんだちめと読みます)という放牧された馬で有名な岬です。
僕のイメージしていた寒立馬は、寒風吹き荒む厳しい自然の中、健気に質素に生活するストイックなものでした が、実際にはのんびりと放牧された馬、といった感じでした。
めちゃくちゃ風がきつく、そのせいで、この辺りは風力発電で有名な土地柄でもあります。
山の稜線にそって何十基も風力発電が連なる風景はなかなか見物でしたよ。

本州最北端の大間崎で、早朝出発の準備をしていたら、例の北海道の大地震にあいました。
最も北海道に近い本州にいた、という事ですね。

今回の旅は温泉を巡る旅でもありました。
普通自転車の旅において、一番困るのはお風呂なのです。

石神温泉、下風呂温泉(湯ん湯んという銭湯でした)、酸ヶ湯温泉、十和田湖温泉に入りました。
中でも酸ヶ湯温泉は本当に素晴らしい湯でした。
標高900mを超えたところにありまして、八甲田山を背後に拝めるまさに秘湯、という温泉でして、またシャンプーやせっけんを持ち込んではいけないというルールがあり、お湯で頭をごしごししただけなのにすっかり汚れが取れたどころかリンスしたかように髪はさらさらになりました。
又 酸ヶ湯温泉に至る道はとても険しい峠道で、疲れはてて辿り着いたのですが、その湯に浸かってマッサージしたらすっかり疲れが取れました。
本当に素晴らしい温泉でした。
僕が今まで入った温泉の中で間違い無くNo.1の温泉でした。

酸ヶ湯温泉を少し行き、傘松峠を越えたらそこはもう奥入瀬渓流です。
紅葉の奥入瀬はとても有名ですが、緑の奥入瀬もよかったですよ。
そうそう、これから奥入瀬を訪れる方に一つだけアドバイスです。
通常奥入瀬の石ヶ戸、という場所から十和田湖に向かって散策するのですが、石ヶ戸からではなく、必ず焼山という所から散策を始めて下さい。
有名な観光スポットの多くは石ヶ戸から始まるのですが、焼山から石ヶ戸も素晴らしいのです。
遊歩道を自転車を押していったのですが、人が少なく、道が広い所ではちょっと乗りました・・・。
ほんとはルール違反ですが・・・。

奥入瀬にしても十和田湖にしても、紅葉の季節はとても素晴らしいのでしょうが、僕はいつか冬の奥入瀬十和田湖を訪れてみたいです。
それは厳しい冬なのでしょうが、やはり青森は冬の国なのでしょう。
なんとなく、ですが、冬が一番美しいのでは、という予感がします。

奥入瀬を抜けるとそこは十和田湖です。
本当に静かな、美しい湖でした。
子の口という所を基点に十和田湖を一周回りました。
十和田湖畔にはいくつかの展望台がありますが、その中でもっとも標高の高い御鼻部峠展望台という所にいったのですが、そこからの下りは本当に旅の終わりを締めくくるに相応しいダイナミックな下りでした。
何の為に苦しい峠を越えているのか、自転車の旅の意味、を理解させてくれるものでした。

(十和田湖畔 宿泊した滝の沢峠)

僕自身、何か具体的なものから音楽を創作する事というのはあまり無いのです。
例えば美しい花を見て、そこから直接音楽に繋がる、という事は無いのです。
ですが、今回の旅では直接楽想がわいてくるという経験が多々ありました。
そのうち、青森組曲を書くかも、嘘、書きません(笑)。

今度はね、11月に、寒いから南に向かいます。
紀伊半島一周、というのをやってみようかな、と思ってます。
次は復路輪行にする予定です。

八戸〜六ヶ所村〜尻屋崎〜大間崎〜佐井(高速船にて)〜青森〜酸ヶ湯〜奥入瀬〜十和田湖〜奥入瀬〜十和田湖町〜六戸〜八戸
計400kmぐらい。





inserted by FC2 system